私の通院は本来木曜日だが今週は主治医の都合で昨日だった。
悪いなりに症状は安定しているが、ワーファリンというややデリケートな薬を服用しているので、
定期的な血液検査が必要だ。
採血後、至急扱いで数値を出してもらいその数値をベースに医師の診療を受ける。
昨日も、先ずは受付をした後に採血に向かった。
午前中は患者が溢れていて、小一時間待つ事もあるが、午後は閑散としている。
受付で氏名を確認してから採血する現場へ行く。
昨日も2~3人しか居なかった。
そこで診察券(カード)をボックスに入れて、廊下で待つ。
採血をする人も繁忙時は5人くらい居るが、閑散時はひとりだ。
いつもと曜日が違うせいか、或いは単に新しく採用されたのかはわからないが
いままで見たことのない顔だった。
次は私の順番だと思ったが、別の男性が呼ばれた。
彼が終わって、いよいよ私の番だ。
採血係の女性は、診察券を見ながら私の生年月日を確認した。
それはいいのだが、採血用の試験管が一本しかない、色も微妙に違うような気がする。
‘あれ、今日は1本ですか。おかしいな、いままで一度も1本の時はありませんよ。
少ない時で2本、多いときで4,5本です。’‘今日は1本ですね。’
‘いや、今日は少ない日なのは知っていますが、
4年半通ってますが1本は過去に例がないですよ。’‘消化器の○○さんですよね’‘はぁ?私は循環器ですが・・・’私の前に採血をした男性がまだブースに居残って、腕を押さえていた。
‘えっ、それ俺だよ’取り違いである。
私は
‘あ~ぁ、やっぱり’と採血係りに呟いた。
‘そもそもあなたは、わたしの順番を呼ぶ段階でおかしかった’似たようなことは他の場面でもある。
まともなレストランではないが、ラーメン屋や居酒屋レベルだと、とろい動きをしている店員がいて、
どこかでオーダーを間違えていたりするのを目撃すると、
何のことはない自分のオーダーも間違われたり飛ばされたりする。
昨日も自分の呼ばれる順番が飛ばされたと思った時点である種の
‘予感’はあったのだ。
しかし、事は
‘医療現場’である。
私の
‘身代わり採血’をされた男性は60歳で、
入院前の血液型チェックのための採血だったのだ。
良くも悪くも細かいA型体質の私が、怪訝に感じて
‘未然’に事故を防いだが、
採血係の女性は
‘トレイと試験管が摩り替わってしまって・・・’と言い訳したからさあ大変。
おまけに人間にありがちといえばそれまでだが、
そういう状況で
‘笑ってごまかそうとした’のだ。
プチっと
‘ナリポン回路’が発動した。
‘笑い事じゃないでしょうが・・・、もしこのまま採血が行われて、
彼の血液型が私の血で判定され、入院中に輸血とかの事態になったらどうですか。
そもそも、摩り替わってしまってという言い方は何ですか。
まるで知らない間に風でも吹いてとでもいいたげですね・・・違うでしょ、
単にあなたの錯誤ですよ・・・(以下略’妻に言わせれば
‘他人が間違えた時の責任の追及の仕方だけは超一流’の
ナリポンの本領発揮だ。
可哀想に還暦お父さんは血液型判定用にもう1本採血されていた。
私は本来の2本の採血をされたが、彼女もビビッてしまったせいか、
或いは私に罵倒された仕返しのせいか(笑)、針の刺し方がイマイチで痛い。
別にそれ以上のアクションを起こそうとは思わなかったが、診察時担当医には伝えた。
彼は事情を聞いて謝罪もそこそこに
‘ちゃんとインシデント扱いにしたかな~’と呟いた。
‘ほう、さすが先生は見識が高い。
どうかな~~、別の人が出てきてまあまあってやられたよ’私の診察を終えたあと医師は、採血部門とリスク管理部門の人間に連絡した。
私はもう一度呼び戻された。
医師の説明によれば、採血部門は報告をするつもりだった(蕎麦屋の出前かも?)、
リスク管理部門の人が直接事情聴取したい、とのことだった。
本当は例の永田爆弾メールのテレビ中継があったから戻りたかったが
‘喜んで・・・’と言った。
直ぐに担当者が現れたが、ポジションに相応しい如才なさを発揮していた。
インシデント(incident)は英単語としては勿論承知しているが、
調べてみるとリスクコントール上での定義がある。
重大事故に至る可能性がある事態が発生し、
なおかつ実際には事故につながらなかった潜在的事例のことをさす。
そして、実際事故に至った場合はアクシデントを使う。
そういう説明の時に出てくるのが
‘ハインリッヒの法則’だ。
去年のJR西の事故の時やJALのトラブル多発の時にコメンテイターがしきりにつかったから、
知っている人も多いだろう。
1件の重大事故(死亡)があれば、その背後に29件の軽度の事故があり300件のインシデントが潜んでいる。これをハインリッヒの法則という。インシデントを減少させることにより、重大事故の発生を減らすことができるため注目されている
インシデントと近い意味で使われている言葉に
‘ヒヤリ・ハット’というのがある。
私は初めて目にする語句だが、何しろ‘
インシデント’‘アクシデント’‘ハインリッヒ’の流れで出てくるから、一体何語かなと考えた。
‘ヒヤリ・ハット’とは安全用語で、何かをしようとしたときに
‘ヒヤリ’とか
‘ハッと’した
できごとのことで、事故には至らないものを言うそうだ。
‘なんだよ、日本語かよ、おまけにまんまじゃん、田原俊彦かよ・・・(-_-;)’昔、ガキの頃教師にチクル奴は嫌われた。
ただ病院では、何かあったら躊躇無くチクルことがお互いのメリットになるのである。
妙に病院や医者を神聖化して、言いたい事も言えない時代ではない。
寧ろ彼等も積極的に
‘大事故’につながる因子を発見し、排除したいと考えているのだ。
チクルが‘勝ち’というか‘価値’なのだ。